鬼才 押見修造の個性的過ぎる作品

話題を博す『ぼくは麻理のなか』

こちらの作品も有名

惡の華を送り出した押見修造先生が送り出す作品はまだまだあります。惡の華以降に発表し、巷で話題を集めた作品として『ぼくは麻理のなか』だ。現在はかなり有名な作品となっていますが、まださほど知名度が高くない頃に発表と、コミックスが発売されだしたので筆者もさすがに分からなかった。それもそのはず、この作品もオタクショップで勤務をしている時に、午後の納品で突如としてこちらのコミックスが届けられた時には『……なんだこれ?』と思ったのが第一印象だった。ちょっと失礼かもしれないが、書店員なんて意外とそういうもの。まだこの頃は押見修造という名を知らなかった時期だったので、まさか惡の華と同じ作者が描いたものだとは気づかなかった。その後、本部指示で重点的に展開するよう指示されていたので、別段問題なく陳列して終了した。

そんな今作ですが、やはり訪れるお客さんの中には知っている人が多いのか、初日入荷で入荷数の半分も売れたのです。それだけでも驚きましたが、後にネット広告で宣伝されて話題を集めるようになったことも相まって、今作の知名度は急激に増していきます。ちょうど映像化の話が出ていた時期だったので、それも関係しての事だが。

そんな押見修造先生が送り出す『ぼくは麻理のなか』とはどういう話なのか、まずはそこから説明していこう。

人格入れ替わりの話

作品概要については、平たく言ってしまえば過去に映画公開された『転校生』によく似ている。その世代ではないが、何故かそういう映画があることだけは知っているので、例として取り上げた。ただ現在までの展開を見ると、実は全く似ていなかった、という感想も飛んで来るでしょうが、それは先の話を知っている人に向けてのもの。

簡単に今作のあらすじを述べるとこのようになります。

あらすじ

主人公 小森功は大学生、しかしあるきっかけから大学へと行かなくなってしまい、部屋で引きこもりの生活をしていた。自堕落で何をするわけでもない毎日に嫌気が差しながらも、それでも今の生活から抜けだせずにいた。そんな彼の楽しみは毎日、特定の時間にコンビニで見かける女子高生を眺めること。ストーキングをする功、彼女のことを『コンビニの天使』と呼びながらも声をかけられない功は彼女の後を尾行するだけで満足していた。

そんなある日のこと、いつものように尾行しているとこちらを振り向いて微笑みかけてきた少女を目撃した途端、功の意識は途切れてしまいます。彼が目覚めた時には、見たこともない部屋で寝起きする件のコンビニの天使こと『吉崎麻理』に成り代わっていた。

ひきこもりニートと女子高生が入れ替わる!?

また突拍子もない物語となっていますが、この話で印象的なのは入れ替わった功は仕方なく『麻里』として生活していくことになる。しかし過ごしていく中で彼は気づいてしまいます、それは引きこもりでニートな男が、年ごとの女子高生に生態など知る由もなかったことに。元々麻里は学校では功と違って社交的な性格で友人も多く、非常に快活な可愛らしい少女だった。そんな彼女の代わりをする、というのが功にとってでなくても、男性からしたらどれだけ難しいかが理解できるでしょう。

そのせいで功はクラスメイトから度々不審がられるようになってしまいますが、それでもなんとか誤魔化しつつ生活していこうとした矢先に、1つの障害が生まれた。それは麻里と接点がなかった生徒であり、後に秘密を握る『柿口依』に麻里ではなく、功だと見破られてしまったのです。

女が男で、男が女

功が依に正体を見破られてしまったのはとても単純で、彼があまりにこれまで知られていた『麻里』とはかけ離れた行動が原因でした。友人たちからは不審がられるだけで留まりましたが、依は元々麻里とは一線を置いていただけあって彼女が別人だと言う点にすぐ気づいたのです。

それからというものの、依は功をフォローしつつ、功は麻里になりきる生活をするわけですが、その大半が苦難の連続でした。そして物語が進んでいく中で生まれる謎もあったのです。それは功が麻里として活動しながらも、自分の体はきちんと『小森功』として普段通りに生活していたのだ。そこで麻里の中にいるとされる『功』が1つの疑問に行き着く、自分の体に彼女がいなければ一体『吉崎麻理』と呼ばれた少女は何処へ行ってしまったのかと。