鬼才 押見修造の個性的過ぎる作品

異色すぎる作品

特に何も考えないで見るのがおすすめ

スイートプールサイドを創りだした押見修造、という時点で今作が一般常識にとらわれない、革新的なんだけど異彩過ぎてついていける人は少ない作品に仕上がっている。そのためあまり深追いしないで見たほうがいい。確かに年齢的な部分で、思春期には体毛がネックになるという人は多い。筆者もその1人だったが、元々体毛とは皮膚の中で弱い部分を保護するために生えてくる役割を有しているものだ。なので剃れば必ずしも良い、というものではない。しかし中には生えている体毛のせいで病気になったりする人もいる、しかし剃りすぎても全身の至る所の毛を全て無くすというのもあまり現実的ではないでしょう。

なんでこんなことを大真面目に語っているのか、筆者にもわからない。ですが今作ではどうしても『体毛』というものについて触れていかなければ、今作の世界観を読み解けないというジレンマもあるからだ。一度今作を見てもらえばわかると思いますが、世の中にはもしかしたらこういうことをしている男女がいるかもしれません。可能性の話ですが、ありえるからこそストーリー全てを否定出来ない辺りが尺でもある。

とはいえ、体毛処理の手伝いをしていた主人公が段々と狂気めいた行動を見せる中盤以降辺りから、この作品の異質性をさらに高めることになっていくのだった。

剃る中で知る快感

今作の主人公、太田年彦は高校生になってもまだ体毛が生えてこないことにコンプレックスを抱え、対してヒロインの後藤綾子は自身の体毛が濃すぎて悩みとなっている。どちらとも、体毛に関しての悩みを抱えており、両者がそれぞれ共通の悩みを抱えているからこそ打ち解けるきっかけにもなった。年彦は綾子の濃さを羨み、綾子は毛のない肌をしたつるつるとした肌の年彦に憧れを抱く。綾子も年頃の少女で定期的に体毛処理を試みているが、中々うまくいかないこともあって年彦にそれを依頼した。

その後は放課後に2人で誰も知らない秘密の時間の中で、年彦は綾子の体毛を剃っていく。最初こそ戸惑いながらでしたが、何度となくこなしていくことで年彦の中で綾子に対する思いが膨らんでいった。自分と綾子が共有する中で、彼女の体毛を剃ることに静かな悦楽を覚えていく。しかし年彦に思いを寄せる同じクラスの坂下がたまたま目撃し、綾子にあることを伝えるとそれ以来綾子は年彦と距離を置くことになった。

丁度その頃には剃毛のかいあって水泳の実力もメキメキ伸ばしていた綾子は、何かと忙しくしていたほど。綾子から剃毛してほしいと言われなくなったことからようやく、解放されたかのように見える年彦。しかし彼の中で変化を兆し始める瞬間でもあり、あれだけの排他的な時間を過ごした後では何も忘れられなくなってしまったのだ。

剃毛する喜び

やがて年彦は綾子の毛を剃れなくなってしまった状況を悶々と過ごす羽目になる。そんな時は、隠し持っていた綾子の体毛を利用して欲求不満を解消していった。その際の行動は見るもの全てに、一言『変態的』と共通の感想を抱かせるほどの衝撃を与えます。

一方綾子は年彦との距離を置く中で、片思いの相手だった二宮と接近しようとするが、こちらも一進一退の状況が続いていた。それもあって年彦の想いは更に募っていき、そんなことなど露知らない坂下が純情な思いを彼に向けるという展開には行き着く暇もない。そうした中で年彦の綾子に対する思いがどんどん膨れ上がっていく中で、彼女がどうして自分と関わらなくなってしまったのか、その理由を考える。

彼の中で辿り着いた結論とは、『彼女が自分に毛があることがダメなんだ』という旗違いな答えに到達してしまった。

毛を無くすことに喜びを抱いていると勘違い

年彦は彼女の毛を剃っていく中で、非日常的な時間に言い知れぬ思いを抱いていきます。ただ剃っていくことで年彦が抱く思いと綾子が思っていたものとが、乖離していく瞬間でもある。年彦は彼女が毛というものを全て嫌っているから剃ってほしいと依頼したのに対して、綾子はただ毛深すぎる腕や足などの毛をなんとかしたいという少女として思う当然の心理に過ぎなかった。いつしか2人の思惑が全く別方向へと流れて、やがて剃毛させてくれなくなった綾子に毛が生えてこなくなる劇薬を自分にかけてくれとまで迫るようになってしまう。

説得したことで落ち着きを取り戻した年彦だったが、薬の代わりに性器周辺の毛を刈らせて欲しいと綾子に依頼し、彼女はそれを受諾した。結果的に一歩まで踏み込んでも出来なかったことから、ただ剃毛していればいいだけではなかったことに気づきます。

結末は

その後年彦は綾子に剃毛の仕方を教えると、夏休みという時間を持って2人の関係に幕が下ろされる。一夏に経験した男女のイケない関係は終止符を打ったように見えましたが、2学期になった時に年彦がやっと体毛が生えてきたのです。先輩たちからはそれを剃ってやろうかとからかうが、そこに綾子が自分が剃ると提言してきた。

ここで物語は幕引きとなり、その後の展開は見たものの想像で完結している。

なんというべきか、これほど背徳な作品を見たことがないという人もいるのでは。筆者にしても、今作を見た時その内容が意味する斬新さはこれまでにない作品性に震えた事以外では、薄っすら恐怖すら覚えた。